プリンセスの条件
タクシーに揺られ、手を繋いで幸せそうに寄り添いながら通りを行き交うカップルとすれ違う度に、涙が溢れて零れ落ちそうになった。
翔太もこんな風に彼女と街を歩くのかな。
今日もあのお店を出た後、彼女を家まで送って行くのかな。
それとも……
翔太の部屋で、あのベッドで……。
窓に映る自分の顔が、すごく醜く見えた。
これが、嫉妬……?
それはあたしにとって初めての感情。
翔太はあたしに、“初めて”ばかりを教える。
男の人に抱かれて感じる幸せも。
まともに顔も見られないくらい恥ずかしくて、だけどドキドキが鳴り止まない、恋する女の子の感情も。
独り占めしたいと思う欲張りな心も。
きっと全部気づけなかった。
翔太を“男”として見る日が来てなかったら。
だけど、こんな感情知らなくてよかったのに……。
恋はいつだってあたしの心を楽しくさせた。
例え失ってしまっても、“苦しい”とか“哀しい”とか、そんな感情どこにもなかった。
こんなに胸が痛んで泣いてばかりいなきゃいけないのなら、自分の気持ちになんて気づきたくなかったよ……。