プリンセスの条件
「タカヒロ。今までありがとう。幸せになってね」
これで終わりだと思ってた。
タカヒロとの恋は。
それなのに……
「うわぁん!翔太ー!今日も家泊めてー!!」
翌日からあたしは家に帰れなくなった。
「なんだよ、まだ元カレにストーカーされてんの?」
生まれた時から兄妹のように育ってきた、幼なじみの翔太が呆れ顔で玄関を開ける。
「そうなの……あたし、どうしたらいいの?一体いつ家に帰れんの!?」
「知るかよ!!」
「あッ、冷たいよ翔太!!」
タカヒロに、別れた翌日からずっと、夜あたしのマンションの前で待ち伏せされていて、怖くて家に入れない。
だからこうして、うちから一駅隣に住んでいる翔太へ助けを求めるようになってしまったんだ。
「第一、元凶はお前だろーが」
「なんであたし!?」
「“好きだけど結婚は違うと思う”なんて言われた日にゃ、オレだって納得いかねーよ」
「普通分かるでしょ!?」
「分からん、さっぱりな。ハッキリ言ってオレは元カレに同情してる」
「はぁ!?」
玄関先でギャーギャー喚き散らしていると、隣の住人が玄関から顔を覗かせてこっちをギロッと睨んだ。