プリンセスの条件
キスを終えて翔太が教えてくれたのは、昨日の記憶の空白の時間。
それを聞いて、あたしは一気に体温が急降下。
「ウソ……」
「マジ。昨日オレ、告られた。お前に」
あたしの髪の毛に指を通しながら、翔太が穏やかに笑う。
「昨日のアレ、マイの本音と受け取っていい?」
茶化すわけでもなく、あまりに真剣な目であたしを見つめるから、観念して言葉の代わりに素直に頷いた。
だけど翔太はそれでは不満らしく、
「ちゃんともう一度言えよ」
なんて言って、あたしの顔を両手で固定する。
「今度は『覚えてない』なんて言わせない」
「翔太……」
翔太の瞳がゆらゆらと揺れる。
「言えよ、マイ」
わけも分からず涙が流れるのは、翔太を好きすぎる気持ちの表れ。
「言えよ……」
なぜか翔太の顔がとても切なく歪んで目を閉じたから、本能的に抱きしめてしまった。
「好き」
「マ…イ…」
「翔太を好きすぎて、……あたしがあたしでいられない」
いつだって頭で考える恋愛ばかりしてきたのに。
翔太を好きだと自覚した今のあたしは、とても醜い“感情”というものに振り回されてばかりだ……。