プリンセスの条件
「ご、ごめん」
あまりにも彼女の言葉が威圧的に聞こえて、少し怯む。
慌てて身体を起こすと、翔太もゆっくり起き上がった。
「翔太くん!!」
彼女が翔太を手伝おうと、しゃがみこんで手を伸ばそうとした時、反射的にその手を払いのけてしまった。
「痛ッ。ちょっと、あなた何するの!?」
「触らないで、翔太に」
「意味分からない。あなたに指図される覚えなんてないんだけど」
そう言ってもう一度手を伸ばした彼女より先に、
「ダメッ!!」
翔太の身体にしがみついた。
「ちょっと!!」
彼女の声もいっそう大きくなる。
だけどあたしは、小さい子供がおもちゃをとられまいと必死にしがみついてるように、翔太の身体にもっと強く腕を回した。
「ダメなの!!翔太は……翔太はあたしの大切な人だもん。……だから誰にもあげない!!」
シーンと静まり返る中庭。
あたしの耳に届くのも、自分の嗚咽だけ。
もう明日から大学に来れないかもしれない。
だけどそれでも、翔太が他の女にとられるよりはマシ。
今のあたしに後悔なんてなかった。