プリンセスの条件
「誤解されるようなことは言わないでくれる?あの日終電がなくなったって言って、突然家に来たのは那波だろ?確かにオレはあの日キミを泊めたけど、オレはすぐ出かけたよね?キミに鍵を受け取ったのも大学でだったはずだけど」
翔太の言葉はきっと嘘じゃない。
2人の間には、あの日何もなかった。
あたしは、翔太の言葉を信じようと思った。
翔太がそう言うなら、信じるしかない。
「……2人で飲みに行ったりしたよね?」
「友達と飲みに行くくらい普通でしょ?」
「でもッ、腕、くんでも文句……言わなかった」
「それはあの場所に、マイがいたからだよ。マイに嫉妬してほしかった。ずっと男としてオレをみてほしかった。だからキミを利用したんだ。オレは、そういう酷い男だよ」
何も言わない彼女に、翔太は最後にこう言った。
「那波もさ、かけ引きとか回りくどいことはやめて、ストレートに勝負した方がいいと思うよ」
「え?」
「マイはさ、昔からいつだって自分の気持ちに正直なんだ。好きなら好きって、素直に言葉にする」
「……」
「那波もさ、もともと魅力的なんだから、素で勝負しなよ。次から」
ずっと背中を向けていたから彼女の顔は見られなかったけれど、走り出す足音だけは聞こえた。
翔太が側にいた友達に声をかける。
「那波のこと、頼むよ」
「あぁ」
彼女を追いかける2つの足音。
その音が聞こえなくなった時、「マイ」と名前を呼ばれた。