「湯をかけて三千里」
で、そん時、彼女二十一歳が、たまたまおまえらと同じ車両に乗ってたりして、七年ぶりにおまえの顔見つけて、おまえらの阿呆な会話とズボンの動き見て、あぁ、おまえらがこれから何をするか知ってもうて軽い吐き気するも、四人の方はそんなん知ったこっちゃあれへんから、彼女も周りの乗客の反応も全然気にせず、四人してうつむいて下半身もぞもぞポケットの中から触って触ってしかも大声で言う、鰤「しゅっぱーつ」糊「ちんこー」ドリ「発射!」鰤「あー出るー」ドリ「早く出せや」鰤「ダメですわ隊長、遅延しとる」糊「遅延?なんでや」鰤「は!ただ今、チンチン事故が発生しております」ノリ「バカ野郎!事故っとう場合やないでシコれやシコれ」その会話があまりにも酷いから、彼女二十一歳は、次の駅に電車が着いてドアが開いた瞬間、すかさずバカ中学生四人のケツを蹴り上げ、頭どついて、次々と四人の髪ひっ掴んで、電車外のホームに引き摺り出した。呆然と彼女の顔見つめる四人、そんなアホどもに向かうて「見苦しいわボケ」と言うた彼女二十一歳、その直後、彼女が気付いたのは、おまえとはかつての顔見知り同士やったちゅう事。かつて、彼女二十一歳の実家の近所に、おまえは住んどって、おまえがまだ小学生低学年の頃から彼女二十一歳はその顔知っとって、でも、長い間はおまえと彼女は一切会う事は無かった。理由は、さかのぼる事六年前、彼女当時十五歳が、自身の中学卒業と同時に上京しよったからで、彼女が上京したその理由は、ただこの土地の人間全員に心底ムカついとったからで、そのムカついとった理由は、彼女当時十五歳が、中学校卒業直前に起きた電車事故。この環状線を走る電車が、脱線&対向車両正面衝突事故を引き起こして、それで乗客数名が死んで、当然、大きな社会問題になって、で、そん時事故車両を運転しとったのが彼女の父親やったりして。