「湯をかけて三千里」
とぼとぼホーム歩き出す四人、その一人のおまえの背中をおもむろに掴んで、ちょい待てやと彼女二十一歳。これからどっかで一緒に飯食おうやとおまえ誘うと、おまえの返事「ええよ、でも、みんなと先にトイレ行ってくるから待っといてや」、で、トイレに向かって歩く最中、ホームの上で、鰤がおまえに言う「しっかし、あいつなんや!勝手に人を途中で電車から降ろしといて、何様や。で、おまえ、あの姉ちゃんと知り合いなんか」おまえ頷く、鰤続ける「あー!あれか、あの事故やらかした運転手の娘やろ、あいつ!おまえ言うとったやん、めっちゃ年上やけど女友達なら一人おる言うて」頷くおまえに冷やかしで言う鰤「あの運転手ってな、運転中にチンコいじっとったんやろ?あんなに、人死なせといて最悪のクズ野郎やん、しかも自分は生き残ってもうて。昔、雑誌で読んだ言うてオヤジ言うとったわ。でな、そんなクズの娘ってどんな奴なん?クズの娘が生き残ったあげくにな、電車に乗る権利なんかあんの?敷かれて死ねばええねや」次の瞬間、おまえは鰤の髪を、思いっきり両手で掴んで、鰤の顎めがけて自身の膝を何度も何度も蹴り上げて、更に、右頬を拳で殴って、左頬も殴って、更に更に、ホームから下の線路めがけて鰤を突き飛ばした、線路上に落下した鰤を、実は遠くから見とった彼女二十一歳が大声で叫ぶ、誰か停止ボタン押してえや!はよ押せえや!駅員呼んでや!同時に、持っとった鞄その場に投げ捨てて、自分もホームから線路の上に飛び降りて、落ちた鰤の元に駆け寄るが早いか、すぐに鰤の体を抱え上げ、ホーム上にいた糊やドリの手を借りて鰤をホーム上に押し上げて、自分もよじ登るその動作、僅か一分もかからず、周りにいた客数人から拍手が出る程。で、彼女二十一歳は駆け寄る駅員を無視して、おまえを思いっきりビンタして張り倒す「また人殺す気なんか!」とか言うて。おまえを何度も張り倒そうとする彼女の手を握って止めたのは、おまえに落とされた鰤自身で、奴は弱い声で彼女に懇願する「もう止めてや、俺が悪いんやー」そんな彼の顔見て、彼女は鰤の手を乱暴にふり払うて、勝手にせえやクソガキどもが言うて、その場から静かに去り出してんけど、なんでか、おまえら四人は彼女の後ろ黙ってとぼとぼ着いていく。