「湯をかけて三千里」
おまえはちらっと彼女当時十五歳・現在二十一歳の横顔を見て「でも、めっちゃ背伸びたやん、東京でバレー選手でもやっとったんか」アホか、背が伸びたとかどうでもええやろ、と彼女。彼女もおまえの顔をちらっと見ながら言う。でも、おまえは当時出来へんかった事出来るようになっとるやんけー、さすが六年ってたいした時間やの、汁出せるようになってんやからなあ!よう成長したわケケケケとかなんとかかんとか。おまえら四人赤面。ここで恥ずかしがるぐらいなら車内でアホな事すんなや、思う彼女二十一歳。なあ、環状線ってどんぐらいの時間で電車一周すんねや、とおまえに訊くと、答えたのは、おまえやのうて、更に隣に座っとった鰤で「だいたい一時間で一周」へえ、と彼女頷く。それあっちゅう間やな、毎日毎日ぐるぐるぐるぐる同じ場所延々回っとってな、電車かて脱線もしたくなるもんかもな、まあ、実際脱線したらしたでな、犠牲半端なかったけどな、ほんと。人は大勢死ぬわ、うちの人生もレールから思いっきり外れたし、高校行くんも止めてもうたしな、とかなんとか彼女ぶつぶつ。彼女、おまえら四人をじっと見て、ガキは六年も経ゃちゅあこんなに変わるもんやの!六年は長いな!と大声。どや、おまえら汁出せるようになってから人生変わったやろ!なんてそれも大声で言う。四人沈黙。ようけ練習しとけよ!彼女の大声止まらへん。でもうちは、なんも出来る事増えとらんわーとまた同じ事いう彼女におまえが反論「ほら、さっき、僕が落とした鰤を助けられたやん、昔やったら無理や、そんなに背大きくなかったし、下手したら、また事故に。。。」