真の赤い糸

教室に戻るとクラスはすでに昼食の時間でにぎわっていた。




「よー、瀬川。また鬼ごっこか?」



千尋「浜崎君…」



(やだ……また見られてたんだ………)



彼は同じクラスの浜崎彰伍君。
クラスの人気者で、彼の周りにはいつも大勢の人が集まっているクラス中心的存在。
何千人もの生徒がいる校内で、サッカー部2年エースの彼を知らない人なんて誰もいない。


浜崎「瀬川はいつも元気だよな。見てて楽しいよ。」

見てて楽しい?
それは褒め言葉なのだろうか。


千尋「えっと、その………」

あんなみっともない姿を見られて恥ずかしいよ…………


浜崎「…………気にすんなよ。」


千尋「え?」


浜崎君は何を思ったのか、さっきの男子の話を聞いていたのだらうか。

私が元気ない事に気づいたのだろうか。


浜崎「………あんな女見る目ないやつらの言う事なんて気にすることないからな。瀬川はちゃんとした女だって、俺はわかってるから」


千尋(浜崎君…………////)

うそ……
浜崎君にそんなふうに言ってもらえるなんて夢みたい……………


今、きっと私の顔は真っ赤なんだって自分でもわかる…………



男子「彰伍ー、こっちでゲームしよーぜ」


浜崎「おう、今行く。じゃあまたな、瀬川。」


そう言って彼は大勢の人の輪の中へ歩いていく。



男子の中でただ一人、唯一私に優しく声をかけてくれる浜崎君……………



浜崎君が優しいのは前からだった…



そう…忘れもしないあの日…


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