まいひーろー


ボーっと、セリフを覚えなきゃいけないはずなのに、両手に台本を握りながら視線をさまよわせていたら。


「蕾、逃げっ……」


なぜかメジャーで全身絡まっているという奇妙な状態のまま、なぜかこっちに突っ込んでくる太陽くん。
どういう状況なのか、全く理解できないまま硬直していたら。


「ひゃっ!」


ガタンッ!


太陽くんの両腕がいつの間にか私の両端に添えられている。


「ってぇ……」


なぜか太陽くんの声が耳元で聞こえてくる。


………。


「大丈夫!?
……って、何、太陽。
こける振りして蕾ちゃんに抱きついたの!?」


太陽くんの腕が、私の両端に。
そして机の前に立っていた私は、太陽くんに押されて机の上に座っている状態になっている。
さらにその上から太陽くんが抱きついている体制になっていて。


「おい、みんな見てみろよ!
太陽が白石ちゃん押し倒してるぞー!」


「お、ついにやったかあの鈍感の天然男が!」


当然のごとく、教室全体の視線は私…と太陽くんに集まる。
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