まいひーろー
とりあえず、セリフはちゃんと覚えた……はず。
緊張で忘れたりしなければ。
ただ心配なのが、見せ場である王子二人との最後のほうのシーンでは時間がなくて合わせる暇がなかったということだ。
衣装と小道具で大半の時間を削られ、王子たちは全くセリフを覚えていなかったので私だけとか、小人や魔女の登場シーンは練習したけれど王子たちのシーンは正直言ってほとんど練習していていない。
それについてクラスメートの一人から言われたとき太陽くんは……
「大丈夫!いざというときはアドリブで「やったらまわりが合わせられないでしょ!!」
と、茜ちゃんの手が飛んだのは言うまでもないけれど。
とにかく、王子役の太陽くんと如月君が心配なわけで……
ピロリロリンッ♪
「はい、もしもし?」
『あっ蕾!?
ごめん、今から屋上行くんだよね!?
もし聖と太陽見つけたらすぐに教室帰ってくるように言っててくれない!?
あいつらどっかいっちゃって……!』
「あ、わかりました!」
茜ちゃんの声に相槌を打ち、ありがとう!と聞こえた後声が途切れる。
………大丈夫かなぁ。
茜ちゃんだいぶ焦っているようだったけど。
念のためと、私は先ほどよりも幾分か速度を上げて、屋上へと急いだ。