まいひーろー
ごく自然な動作で手を差し伸べられ、相沢君の視線の先にあったコーヒーをわけもわからずに差し出す。
「…………」
なにをするつもりなんだろう……とその様子を見ていたら。
「…………!!」
「んがっっ!」
…………飲んだ。
しかも、ゴクンとのど仏が動いたと思うといきなり奇声らしきものが。
そして、ピタリと足を止める相沢君につられて私も足を止める。
「み、未知の世界………」
そう言って、恐る恐るといった様子でコーヒーを私に返す。
相沢君の表情は、引きつっていた。
そして、また歩み始める相沢君に付いて行きながら、
「………苦かった?」
「………アハハ。」
苦かったんだ………。
「すごいなー、蕾は。」
すごいすごい、と横で言う相沢君に私はまたストローをくわえる。
あまりにも普通な相沢君に、私は考える前にすっかり頭から抜け落ちていた。
相沢君と、間接キスをしてしまったことを。