まいひーろー
名前で呼んでよ
「あっれ。もうみんないっちゃったの?」
「もうって……とっくに行ったよ。なんでそんな遅かったわけ?」
缶コーヒーも半分になった頃、教室に着いたときには茜ちゃん以外は誰もいなかった。
「え、そんな時間たってた?
全然わかんなかった。」
「…………」
昼休みは基本、みんなご飯を食べるから、このクラスで食べたら楽しいんだろうな…なんて思っていたから、目を丸くする。
そんな私を見てわかったのか、
「ここの学校は基本的屋上と常識外の場所以外は自由開放だから、みんないなくなるんだよ。」
「あと、早弁してグランドに出てる奴らもいるし。」
茜ちゃんと相沢君が説明してくれた。
「でもま、太陽が遅れた原因はソレ見て大体わかったわ。」
茜ちゃんの視線の先には、手のひらにたくさんのっかかったクッキーの袋。
人気者なんだなぁ…と関心していたのが、茜ちゃんの場合はそうは思わないらしい。
「あんたさぁ……まーたそんな貰って、またあんたのこと好きになる子が増えるじゃん。」
隠すことなくキッパリと言いきった茜ちゃん。
そんなにはっきり……なんて思っていたのだが、次の相沢君の言葉に茜ちゃんがそこまではっきり言う理由が自然と納得した。
「好きになってくれるのって、いいことじゃん。
なんでだめなの?」
「…………」
「…………」
傍から見たら、女遊びの激しい男の人みたいな言動に取れるが、相沢君のキョトンとした表情と噛み合わない。
「………だから、あんたに気があるんだよ?」
「好きってことでしょ?
なんで言いかえるんだよ。」
変だなぁと言う相沢君に、なんだかわかってしまった。
モテる理由と、それに対する相沢君が。