まいひーろー

「~♪~♪」


私の手を握る相沢君は、さっき歌った曲を口ずさみながら足を歩めていく。
それにつられて歩く私。


「………」


「あ、あの………!」


とりあえず手を外してほしい……!


「……ごめん、カラオケ苦手だった?」


鼻歌が聞こえなくなったと思うと、そう聞こえてくた。
……が、前を歩いている相沢君の顔が分からない。


「えっ?」


「さっきも、なんだか居心地悪そうな顔してたから、」


そ、それは如月君が肩にもたれていたからです……!なんて、言えない。
けど、良かった。相沢君からのアングルだと如月君は見えなかったようだ。


「そ、それはカラオケに来たのが初めてだったからで、特に苦手と言うわけでは……!」


「なぁんだ、よかった。
蕾が嫌がってたら歓迎会の意味無いもんな。」


「う、嬉しかったよ……!
とっても、とっても。」


「うん、わかってる。」


くるりとこちらを振り向いた相沢君の顔は、初めて会った時のような極上の笑顔で。



もう、その手を離してとは言わなかった。
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