まいひーろー


「………ねぇ、」


「えっ?」


私の右手にはウーロン茶、相沢君の左手にはオレンジジュース。
そして空いた手はお互いの手。


「俺のこと、名前で呼んでよ。」


「へっ……」


相変わらず、私の方が歩幅のせいか、相沢君の顔は見えない。
……隣で歩いていても見上げないといけないけれど。


「な、なんで……」


だんだんと顔が熱くなるのを感じる。
と、とりあえず顔を冷やすためにウーロン茶を一口飲む。
……なんだか、お茶をストローで飲むのって、変な感じ…。

一瞬で思考が変な所へ行ったのを、相沢君の声でまた引き戻される。


「だーって、ずるいじゃん。茜のことは下の名前で呼ぶのに、俺は相沢君、って。」


「そ、それは女の子でっ…」


「男女区別反対ー。」


拗ねたように言う相沢君にどうしようかと視線をさまよわせる。

………と。


あれ?


よく凝らして見ると、相沢君の耳が赤い。


慌てて一歩前の相沢君の隣に言って、見上げてみると。


「………真っ赤。」


「ちょ、蕾!」


照れた様子の相沢君に、自然と私はクスクスと笑いを漏らしていた。
< 41 / 184 >

この作品をシェア

pagetop