まいひーろー
『次の競技は、借り物競争です。
出場者は入場門の前に…』
放送の声を聞きながら、私はあまり人の少ない建物の影にいた。
本当は屋上に行きたかったけど、茜ちゃんが持っていることを思い出して断念し、ウロウロしていたらちょうど見つけた。
ここからなら人も少ないし、日陰で涼しくて座るところもある。
ただ、グランドがちょっとしか見えないのが難点だけど。
売店に売っていた糖度20%のコーヒーにストローをさして飲む。
幸い、実況があるためにグランドが見えなくとも状況は分かる。
日陰の涼しい風に当たりつつ、コーヒーを飲みながら私は実況に耳を傾けていた。
『借り物競争は、全学年から2人の出場者がおり、一度にスタートしてもらいます。
そして、お題に合った物、人などを持ってきたり連れてきたりすればゴール。
その代わり、全校生徒の前でやってもらうので不正は無しですよー。
あと、ゴールするまでお題を誰かに口外するのは厳禁です!
問題にあっているのかどうかを判定するのは先生なので、もちろんズルも通用しません!』
『ちなみに、ちょっと特殊で今岡の借り物競争の得点は50点と超高得点となりますので、もしかしたら逆転も狙えるかもしれませんよー。』
実況の言葉にワーとグランドが騒がしくなる。
『ただーし。
得点が高ければそのぶん難易度も高し。
お題はどれも超ハイレベルなのでがんばってくださいー。』
それを合図に、パァンと開始を知らせる軽快な爆発音が聞こえてきた。
『おぉーっと。
最初に紙にたどり着いたのは1-Bと同率一位の3-Dだぁ。
紙を見た瞬間この世の終わりみたいな顔をしているー!!』
……この世の終わり?
『さぁ、続々と紙を受け取っている……が、皆顔をしかめその場から一歩も動こうとしないー!』
…………ど、どんな内容なんだろう……
『おおーっと!!
最初に動き出したのは暫定一位の1-Bの大将でもあり、女子からの歓声を一身に受けている相沢太陽だー!!!』