まいひーろー
「!?」
ビクリと肩を揺らして視線を向ければ、息切れしている相沢君。
「ど、どうしたの……?」
「蕾、俺のこと好き?」
「………えぇっ!?」
切羽詰まった様子にふざけたようには思えなくて。
「……あっ、やっ、そういう意味じゃなくて……」
私の反応を見て、相沢君も急に慌てだす。
けど、何が言いたいのかさっぱりわからない。
「お題は口外禁止だからなにも言えないんだけど、俺になにかされても嫌わない?」
しゅん、となる太陽くんの右手にくしゃと握られた紙を見て一気に理解する。
多分、借り物競走の事だろう。
「………うん。」
絶対って言いきれないかもしれないけど、私は条件反射に頷いていた。
だって、あれだけ話しかけて、笑顔を向けてくれた相沢君に何かされて私が嫌うなんて、予想もつかない。
だから、このとき私はまったく考えていなかった。
お題がなんなのか、一体何をされるのか。
「もし嫌だったら、殴って。」
この時の呑気な私はそう言って相沢君に握られた手に何も考えずただ握り返していた。