まいひーろー
「蕾ーー。」
「!!!」
「あの子たちに聞いたら、この通路の端っこのが一番最新機みたいだから、行こっか。」
まだ怖くて、視界は床に固定したままだけど、声の主はすぐに解った。
こくり、とうなずいて視界の端に映る、細くて大きくて、骨ばった手を握った。
「くそっ…男いたのかよ…」
「ならさっさと言えっつの。」
そう、言われてますます恐怖に駆られたが、ギュ、と強く握られた私は反射的に顔を上げてしまう。
すると、そこにはホッと安心させるような、微笑みを浮かべていた相沢君で。
また、熱が戻ってくるような感覚がする。
相沢くんに引っ張られるまま、通路をぐんぐん歩いて行く。
その間にも、両端にならぶプリクラ機に群がる人たちが、なぜかこちらを見ている様な気がして。
縮こまる私に、相沢君は。
「ごめん、」
「………え?」
「一人にさせて。」
それだけ言って、手を握る力を込める。
私はそれに無言で握り返した。