完◆ ぐだぐだ
ゆっくりゆっくり家へと向かう。
ゆっくりゆっくり。
嫌いです。
私は母が大嫌いです。
大嫌い。
こっそり自宅に戻りました。プチ家出は秘密です、未遂ですから。
弟をベッドに寝かせ、小さく謝った。
それは。小さな秘密です。
「南ちゃん、お帰りなさい」
玄関のドアが開く音がし、私は何食わぬ顔で母を迎え入れた。
南ちゃん…。
私も友達みたいに“お母さん”と呼びたいけれど。
――母を下の名前で呼びます。
ずっと南ちゃんと呼んできましたから。
母は母でなく、南であり女なのです。
女であるから南と名前を呼びます。