完◆ ぐだぐだ
「……え、ど、したの」
私の目に映ったのは。
丁寧な巻き髪が乱れたボサボサ頭の、
完璧な化粧が崩れた貧相な顔の、
かかとの高いヒールが折れた靴の、
香水でなく汗くさい、
私の知らない女が居た。
目が血走って、息を切らし、必死な形相の――
「南ちゃ…」
母は怒鳴った。私を叱った。
それは初めてだった。
死ぬほど心配したと、探したんだと。
未遂の秘密は、母が予定より早く帰宅するという思わぬ誤算でバレていたようで。
別人の母が私を叱った。甲高い少し語尾が上がる
声。
子守唄より胸に響きます。