完◆ ぐだぐだ
「抱きしめてーキスしてー裸にしちゃうの??」
けらけら笑い明菜は泰則の方を向く。
「非日常の空間、夜明けまで愛し合うか??」
にやにや笑い泰則は明菜の方を向く。
和室、障子、和服、旅先…、相乗効果も加わる。
艶やかな夜になる演出は揃っているのだから――
二人は微笑み合う。
彼氏の瞳に映るのは彼女だけで、彼女の瞳に映るのは彼氏だけだ。
他の何も映さない。
頭の中の思考さえ見えてしまいそうなくらい、
二人は相手のことをよく知っていた。
それを信頼と呼ぶのか、馴れ合いと呼ぶのかは、よく分からない。
ただ心地良いことは確かだ。