あの夏の日
改札口を出ると、



なおきがいた。



どうして別れるのか、と何度も聞かれた。



あの人とは何でもないと、



必死で弁解していた。



そんな彼の姿は



なんか哀れだった。



ふと後ろから



視線を感じた。



そう…



あの人だ。



顔を見なくても、



わかる。



ディオールの香水が



ほのかに香っていた。



彼がプレゼントしてくれた



あのディオールと同じ香。



そういうことだった。 




遊ばれていたのも知らず、



身を任せた。



自分がいやになった。



私は



見守っていたその人に、



彼をよろしくと耳うちし、



また改札口へと戻って行った。




< 25 / 101 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop