あの夏の日
彼女は母子手帳が必要な時期になった。




父親の欄を空欄にして、



申請するつもりだった。



ある朝目覚めると、



サーファーの姿はなく、



テーブルに白い紙とペンが



置かれていた。



<婚姻届>



初めて見るものだが、



間違いなく本物だった。



夫の欄には



柴田 瑞季



そう書かれていた。



彼女はとまどいを隠せなかった。


『なにも心配しないで』



振りかえると



変わらぬ笑顔があった。




『彼もきっと許してくれるよ』



そう言って、



彼女にペンを握らせた。



寒い冬のことだった。



街はクリスマスのイルミネーションにあふれ、



彼女にとって忘れられない日となった。





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