あの夏の日
やがて、



月が満ち…



新しい命が誕生するときが



近づいていた。



そのときの知らせがあり、



彼女は夫と共に病院に向かった。


思いの外、難産だった。



精神的に疲れていた彼女は



自力で生むことはできず、



手術で取り出すことになった。



麻酔で眠る彼女を残し、



夫は別室によばれた。



『危険な状態です。最善を尽くしますが…。』



そう医師から告げられた。




彼の必死の願いは届かず、



彼女は帰らぬ人となった。




彼はショックで



ぬけがらのようになった。



医師はなんとか彼を説得し、



生まれたての赤ん坊を



一緒に連れて帰ってもらった。



1985年5月10日




かいとはこの世に生を受けた。



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