マスタード
*
それからあたしは何だか大地とも気まずくて、(何で気まずくなるのってあたし自身も分かんないけど)
あれからまともに大地の顔を見れなかったりする。
あたしってば、なんか変。
18年間生きてるなかで一番自分が分からない。
「あ、結局来たんや、七星、と千夏。」
暗いライブハウスの中、見上げるのはライオン頭の笹原。
あたしの後ろで違う友人と話している千夏をチラッと見た。
『…悪い?』
暗くて笹原の表情もあんまり見えない。
「全然!ほんま嬉しい~、楽屋来てや、大地と雄太もおるから。」
雄太はDAWSのドラムの人。あたしも顔見知りだけど、正直好きじゃない。
だってあいつって、軽くて、いわゆる“女の敵”みたいなね。
あたしが返事をする前に笹原はあたしの手首をつかんで引っ張っていく。
『、ちょ、ちょっと、』
聞こえてるのか、聞こえてないふりをしてるのか笹原はあたしを引っ張ってずんずん廊下まで進んで行く。