マスタード
『っ、ちょっと!離して、』
あたしは思いっきり腕を振り下げて笹原の手を解く。
「…なに?どおしたん?」
『…あたし、別に楽屋行きたくないから…、』
「…この前言ったこと、気にしてん?」
こいつ、あたしのことからかってんの?
この前はおもしろそうに笑ってたくせに、今は真剣な顔して、ばっかみたい。
『あんたは、あんたはあたしの敵…?』
「…あれは、ちょっとしたジョークやで。嘘かもしれへんけど、ほんまになるかもしれんっていう。」
会場から盛りあがる声が聞こえる。そんな中、あたしと笹原は静かな廊下で向き合う。