マスタード



『勝手についてきて、勝手に人の家族事情に首突っ込んで、弱みでも握ってやろうって?』

自嘲気味に笑うあたし。
大地は心配してくれてたのに、分かってなかったのはあたし。


「そんなんじゃねぇよ!」

あたしはこのとき初めて大地が怒鳴ったのをみた。
ほら、中学生のあたしもびっくりして固まってる。


「七星はいっつもそんな感じなくせに、なんで親父に何も言えねぇんだよ。いつも親父の悪口ばっか言って、殺してやるって言って、なのに痣だらけになって学校くんだろ。お前が何も言えねぇなら、俺が言ってやる。」


『…何それ、ばっかみたい。英雄気取り?あんたなんかに助け求めてない!』


「あぁ、お前が助けてって言えねぇときは、俺が助けてやる。」


『…馬鹿、ほんと大馬鹿!意味ない、全部。』


「あぁ、かもな。それでも戦友が一人増えると思えば心強いだろ?」

そう言って大地は自信満々で笑う。


今まで庇ってくれる人なんていなくって、大人はみんな見て見ぬふりで、
あたし、実はもうこのとき泣きそうだったりしたんだな。
ま、大地の前で泣くなんてこと絶対、絶対ないけど!


『…お節介、自意識過剰!偽善者!ばか!』

「我が儘、強情、糞女!」


いわゆる照れ隠しってやつかな。
ここで素直に守ってもらう女子になれればいいんだけど。



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