此処から先、晴天なり
結局そのあと、入ったお客さんと飲みつづけ。


店が閉まる頃には出来上がってて。


千鳥足でタクシー乗り場までを急いでた。


『電話してみよ−かな−』


あの判断は、間違ってた?


あたしは電話を掛けた。


さっき会った、愛宕で一番いい男に。


何回かコールして、彼は出た。


『はい』


低くて、愛しい声。


『誰?』

「あっ、…永遠です」


思わず聞き惚れてしまって、自分が声を出すのを忘れてた程


『ああ、永遠か。どうした?用事ならさっき言えば良かったのに』


笑い混じりの声。


「保奈美に聞いたの、番号」

『うん』

「これがあたしの、番号」

『うん』

「登録して…ね?」

『うん』


田舎の小さな、つまらない繁華街のネオンがいやに眩しく見えたのを、今でも覚えてる。


『明日、昼間会わね?』


小気味よい男を立てていた、あたしのピンヒールが止まる。


『会いたいと思う、永遠に』




「うん。」





つまらない繁華街は、色を持った。


初めての電話は、単発の言葉で繋がれた拙いものだったよね。


将誠、あなたはきっと、覚えちゃいないのだろうけれど。
< 19 / 19 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

職人の娘。

総文字数/16,898

その他36ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop