With you
「あたしがSPからそれを受け取った後、その……バッグの持ち手のところを門に引っかけちゃって、それに気づかないで引っ張っちゃったから…ちぎれちゃって…ごめんね?」
「…え…?!」
「それで、まぁ、そのお詫びと、俺たちに協力してくれるお礼を込めて、俺たちからこれ、プレゼント」
「えーっと…まぁ、ありがとう」
「どーいたしましてぇ☆」
「でも、あたしのバッグはかなり安物だよ?こんないいバッグもらっていいの?」
「うん、あたしたち、nAyのバッグが好きだから歩夢ちゃんにも持ってもらいたいなーって思っただけだよぉ」
「…そっか……ありがとう」
「うん、それじゃあさ、作戦その1は完了したよね。次はどうするの?警察?」
「ああ…でも、もうちょっと証拠を集めてからの方が全ての罪をさらけ出してやれる。どうせやるなら完璧に、な」
「そうだね…徹底的に、つぶさないと」
昨日は、この冷静な会話がすごい、と思った。
でも、今はすごい、と思うのと一緒に、恐ろしい、とも思っている。
あたしも、あの男が憎くて憎くて堪らない。
けれど、そこまで冷静に徹底的に追い詰める算段なんて、考えてもいなかった。
この2人にあたしが抱いている感覚を言葉で表すとしたら……「畏怖」。
多分、そんな感じだと思う。