With you
少し考えて、佐々木莉奈は言った。
「…例の写真などはJPEG形式でパソコンに送ってください、と兄さんが言ったと伝えておいてくれない?」
「『例の写真などはJPEG形式でパソコンに送ってください』って言えば良いんだね?…分かった。それじゃぁ」
「ええ、パソコンの方、よろしくね」
ツーッ、ツーッと、通話が切れた。
携帯を置き、保留中の受話器を取って通話を再開する。
そうだ、あたしは佐々木莉奈として通話するんだから……佐々木莉奈っぽくしゃべらなきゃ。
「もしもし、お待たせいたしました」
「いえいえ、それで大樹くんはいらっしゃらなかったの?」
「申し訳ございません、急用で先ほど出かけましたが、私が伝言を預かっております」
「あら、そうなの?じゃあ伝言、私に伝えてもらえる?」
「『例の写真などはJPEG形式でパソコンに送ってください』と、申しておりました」
「……分かったわ。莉奈ちゃん、頑張ってね!」
何を頑張ればいいのか分からないが…。
とにかく今のあたしは佐々木莉奈なんだから!
「はい、ありがとうございます」
「それじゃあね!」
「失礼します…」
ガチャッ。
通話を終えて受話器を置いたあたしが思ったのは、佐々木莉奈の声まねは少し高くて難しい、と言うことだった。