With you
今思えば、この一言から、あたしの「日常」は「非日常」に変わったのかもしれない。



でもこの時のあたしはそんなこと知るよしもなく、ただ呼ばれた、と思って返事をした。



「はい…あたしだけど、何?」



「ふーん…」



呆然とする周りを気にせず佐々木莉奈はあたしの近くに来て、言った。



「あなたが歩夢ちゃんかぁ★うん、可愛いね~」



それから今度はあたしの耳元に小さな声で他の人に聞こえないように言った。


「クスッ…もっとブッサイクだと思ってたぁ」


「はぁ?」


初対面なのに何この子。失礼千万。理解不能。


そしてさらにこう言った。


「ねえ歩夢ちゃん、今日サボっちゃわない?」



なんであたしが初対面の相手とサボらなきゃいけないの?


「ごめん、無理。っていうか誘うならまず適切な理由を述べてからにして?」


「うん、分かった。次からそうするね。じゃあ行こう?」


はあ?アンタの中ではあたしが「行く」って言ったことになってるの?


「あたし、行くって言ってない!」


そんなあたしを気にかけず佐々木莉奈はこう言った。


さっきより、大きな声で、大げさに。


「あたし、歩夢ちゃんとはもしかしたら姉妹かもしれないの!事情があって歩夢ちゃんは知らないけど、ほら、あたしも佐々木でしょ?」



周りがざわつきだした。


「歩夢、先生にはうまくごまかしておいてあげるから、行ってきなよ」


「佐々木、姉妹なんだろ?そんな大事な用件なら、学校より大事だよ」


そしてみんなに強制的に教室から出され、あたしは佐々木莉奈について行く羽目になった。
< 6 / 33 >

この作品をシェア

pagetop