ホタル





……………


そんなに長い間話してなかったと思う。それでもやっぱり、彼は最後まで優しかった。


『…幸せになってよ』


そう願える彼は、やっぱりあたしより大人で。きっとあたしが思うよりずっと、あたしのことを好きでいてくれた。

教室に入る前に少しだけ目元を拭い、ドアに手をかけた。






…「朱音達どうする?」
「どうするって?」
「今からみんなでカラオケ行ってー、パーティー直行!」

もうみんな涙は枯れたのか、満面の笑顔のハイテンションだ。
シラフでここまでテンションを上げれるのは、若さの特権だろう。

「みんな行くの?」
「もちー!桑ちゃんも誘っちゃった」
「バッカ、お前桑ちゃん誘ったら酒飲めねぇだろぉ!?」
「お前らっ、酒は禁止だぞっ!!」

地獄耳の桑ちゃんがはしゃいでるみんなの頭をパコンと叩き、そんな様子を見て英里も笑ってた。

あたしも少しだけ笑って、それで終わりにしようと思った。三年間の高校生活を。


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