ホタル


『…ごめんなさい』
『理由は…教えてくれないんだ』
『そのかわり…許さなくて、いいから』
『え…』
『あたしを…赦さないで』



「何考えてんの?」

気付いたら裕太が後ろに立っていた。窓に背の高い裕太が映る。
また少し、背がのびた。

「…元彼のこと」
「元彼?」
「最後に話した日のこと、考えてた」

たまにはあたしも意地悪してみたくて、ちょっと意味深な答えを呟く。
窓に映る裕太が、ちょっとだけ目を丸くした。少しだけ勝ち誇った気分。

「…焼きもちやく?」
くるりと振り向いて裕太を見上げた。裕太は少し驚いて、でもすぐにあの小さな微笑みを浮かべる。

「やいたよ」
「え?」
「当たり前でしょ」

やっぱり顔を赤くするのはあたしで。結局あたしは裕太の一言一言に振り回されてる。
そんなあたしに裕太は、「焼きもち妬かせたかったんじゃないの?」と意地悪な質問。あたしは顔を真っ赤にさせながら、「バカ、」と呟いた。

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