ホタル
…不意に部屋に響くノック音。
思わず目を開ける。
二人一瞬色を失ったが、すぐに裕太は冷静になってあたしの涙を拭った。
そのままドアへ向かう。
あたしもすぐに自分で涙を拭い、冷静になるように心を落ち着けた。
ガチャリとドアが開く音が、いやに大きかった。
「…梨華さん」
裕太の声が届く。
あたしは思わず入り口に目を向けた。
そこには確かに梨華さんがいた。
あたしは声を無くす。
「…お願い、します」
梨華さんは、泣いていた。
「お願いします。もう、やめて下さい。これ以上…あなた達に、罪を重ねて欲しくないんです」
梨華さんは、崩れる様に廊下に膝をつく。
裕太もただ、立ち竦んだまま梨華さんを見ていた。
「お願いします…っ」