ホタル



……………


「旅行、行かない?」


それはあまりにも突然で、あたしは返す言葉を失った。
無理もないと思う。ここ一年近く、あたし達は会話らしい会話を避けてきたのだから。

久しぶりに目を合わせる。また背が伸びたと、思う。

「卒業式の後。あんまいいとこには泊まれないけど、一応ピックアップしてみたから」

呆然としたあたしの前に、裕太はどこかの風景が印刷してある数枚のチラシを差し出した。訳がわからないままあたしはそれを受けとる。

「…朱音」

裕太の声に、顔を上げた。
優しい裕太の表情。未だにあたしは、胸が痛む。


「最後にしよう。きちんと…終わらせよう」


予想できた言葉。涙を堪えるために、奥歯を噛み締めた。




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