ホタル
…「朱音、散歩行こっか」
昼過ぎ、昼ご飯の片付けをしているあたしの背中に、裕太が言った。
蛇口を閉めると、部屋の音が消える。
「いいね、行こっか!」
「どこ行きたい?」
「ん~、こないだアイス食べた河原とか!」
「じゃあ、またアイス買ってく?」
「うんっ」
いつもと変わらないやり取り。裕太も立ち上がって、薄手のジャケットに手を伸ばす。
パーカーも手にとって、あたしに差し出した。
昼下がりの太陽が射し込む部屋に、裕太の笑顔は心地よく眩しくて。
あたしは笑ってパーカーを受け取った。
同時に、大好きな裕太の手も握った。