ホタル
第一章【煙草】
……………
煙草の味がする。
いつもと変わらないタール値だろう。
まだ、煙草吸ってたんだ。
ぼんやりとそんな事を考えたが、すぐに彼の唇があたしの思考回路を遮断した。
何度も何度も角度を変えて、あたしの舌を攻めてくる。
それだけじゃなくたまに優しく上唇を挟むようにする彼のキスが、あたしは好きだった。
......ギッとベッドが鳴る。
彼の手があたしの背に延びてきたことに気付く。
手放してしまいそうな理性を必死に手繰り寄せ、あたしは彼の肩をそっと押した。
肩で息をする。
相変わらず彼は落ち着いた視線をあたしに送る。
「......これ以上は、だめ」
あたしは諭すように呟き、今の今まであたしの思考を奪っていた彼の唇に軽く自分のそれを重ねた。
そのキスを愛おしむ様に、彼は小さく目をつむる。
あたしはそれを見届けて、ベッドから降りた。
それを合図に彼は煙草に手を伸ばす。
「朝から吸いすぎよ」
たしなめる様に言うあたしを見つめ、彼は苦笑しながら煙草を元の位置に戻した。
それを満足そうに見届けて、視線を全身鏡に移す。