ホタル
「お前は…何を言っているのか、わかってるのか?」
"裕太"が"お前"に変わった。
早鐘の様に心臓が打つ。
「わかってます。だてに何年間も、この気持ちを抱えてきたわけじゃありませんから」
裕太も冷静だった。
ただ、握る掌だけは力強くて。
部屋に静寂が訪れた。
誰も何も言わない。
そんな中で、あたしが口を開けるわけがない。
ただ黙って、静寂に耐えた。
「…何故もっと、ちゃんと見張ってなかったんだ」
お父さんのその一言は、あたし達に発せられたものじゃなかった。
俯いていたお母さんが顔を上げる。
「子どもの教育は全て君に任せていたはずだ。何故こんなことになった?」
「…私のせいだと、言いたいの?」
「じゃなきゃ誰の責任だ。常識で考えたらわかる様な当たり前のことを、子ども達はやってるんだぞ?それを…」
「私はきちんと教育してきました!少なくともあなたよりは、二人を見てきたわ!成績だって優秀で…だからまさか、二人がこんな頭のおかしな行動に出るなんて思わないじゃない!」