ホタル
…アタマノオカシナ?
目の前が真っ暗になり、反対に頭は真っ白になった。
自分達が狂ってるなんて、そんなの十分わかりきってる。
弟を好きになるなんて、常識で考えたら有り得ない。
わかってるのに…。
つうっと頬に、冷たいものが伝った。
あたしの涙とわかるまでに、時間がかかった。
わかってる。
この涙は、そんなことが理由なんかじゃない。
唇を噛み締めた。
止めどなく涙が溢れる。
…その言葉を、お母さんから聞きたくなかった。
――瞬間、部屋をつんざく様な陶器の割れる音が響いた。
続けざまに、椅子が倒れる音が無様に響く。
誰もが、言葉を失った。
テーブルクロスを伝ったお茶が、ポタッと床に落ちる。
立ち上がった裕太の目は、今まで見たことのない程、冷たく震えていて。
「…誰のせいかって?」
語尾が震えていた。
空気が割れる。
「っ、あんたらのせいだよっ!俺達がこんなになったのは、全部あんたらのせいだよっ!!なんで…何で、子どもの変化に気付かねぇんだよっ!何で止めねぇんだよっ!!」