ホタル
「…大丈夫だよ、裕太。これは、永遠の別れなんかじゃないから。あたし達に…永遠の別れなんて、ないから」
だって二人は…姉弟だから。
精一杯、笑った。
この恋が悲しいものにならないように。
幸せな記憶がいつまでも残るように。
あたし達の恋に、永遠はなかった。
そんなの始めた時からわかってた。
それでも確かにここにあった。
二人の恋は、確かに流れてた。
それが例え殺那であっても。
ホタル程の、短い命でも。
確かに存在した。
確かに光ってた。
それだけは、変えられない真実。
裕太の腕が、あたしの背中に伸びた。
ブランコが揺れる。
あたしの体が、裕太に吸い込まれる。
裕太は、あたしの頭を抱き締めた。
その胸は微かに震えていて。
「…裕太」
あたしも裕太の背中に腕を伸ばした。
最後の抱擁。
裕太の全てを、五感に焼き付ける。
「裕太の罪は、あたしが赦すから」
…神様。
認めてくれなくてもいい。
赦さなくてもいい。
裕太の罪は、あたしが全部赦すから。
全部、赦すから。