ホタル
長く伸ばした茶色い髪。
入学当初から変わらない短いスカートに、今日はリボンの代わりにネクタイを締める。
ルーズソックスだった足元も、いつからか紺色のハイソックスに変わっていた。
鏡の中に映る自分が、癖の様に髪の毛をさっと整える。
「......もう十分似合うな、ブレザー」
鏡越しに目が合う彼がいつもの笑顔で呟いた。
振り返らないまま、あたしは小さく微笑む。
鏡の中で少しだけ俯き落とす様に微笑む彼を見ていると、胸が締め付けられる程の愛しさに駆られた。
そんなあたしの感情がばれない様にカバンに手を伸ばし、「先行くね」と呟く。
後ろで彼が何か言ったかどうかはわからない。
性懲りもなく振り払えないこの気持ちをどこにやることもできずに、あたしはローファーに足をはめた。
……………