ホタル


「......おめでとう」

あたしも小さく微笑んだ。できるだけ、あの頃の様に。

彼は足を進めた。カン。カン。カン。ゆっくりと、靴音が響く。

登ってくる彼の姿を上から見つめながら、あたしはそっと目を閉じた。


あの頃と変わらない願いを反芻する。










......どうか、赦さないで。











彼の優しさを奪った、あたしの罪を。

















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