ホタル
「あの…俺、大介の替わりで…。あいつ、試合近いとかで部活抜けれないらしくて」
彼が口を開いた。その度にあたしの心臓は苦しい程に鳴り響く。
…その声は、裕太のそれに酷似していた。
「…西?」
はっとして目を見開き、戸惑う自分を隠す様に立ち上がった。
「あ…っと、ごめんね、あんま待たされたもんだからちょっと驚いて…」
「あ、ごめん、遅くなって…」
「や、悪いのは大介だし。えっ…と」
彼は悪くないと言おうとしたが、如何せんあたしは彼の名前を知らない。逡巡しているあたしに気付いたのか、彼は勢い良く
「あ、俺平岡浩司。隣のクラスで、大介の友達で…」
と簡単な自己紹介をした。あたしも続こうとしたが、大して紹介する自己もないのでやめておく。