幸せの条件
 外がほんのり明るくなってきた。

長い長い夜だった。

午前10時を過ぎた頃に姉が弁護士と病室に来た。

「・・・さくら。」

姉が私を病院の中庭に誘う。

あんなに静かだった病院は人や音で溢れていた。

中庭のベンチに姉と私は、座る。

太陽の光が痛い。

青空が眩しい。

私は、目を閉じる。

姉が口を開く。

「・・・会社だけど何も変えないから。社長が変わるだけ。私はお父さんのように・・・。」

「やめてよ、お姉ちゃん。お父さんが生死の境を彷徨ってるのよ?会社のことは聞きたくないわ。」

「さくら、お父さんがそういう状態だからこそ考えるの。たくさんの失業者を出すわけにはいかない。お父さんの意志を無駄にするわけにはいかない。」

「待ってよ。お姉ちゃん、犠牲になるつもり?ずっとずっとお父さんに縛られてきたじゃない、私たち。物も人も。」

「そんなことない。自由にいろいろなことをさせてくれたじゃない。」

「ううん。お父さんが厳選したものから選ばされてたのよ。そして、それを自分で選んだように思わされていただけよ。」

姉の動きが止まった。

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