幸せの条件
 「離して!離して!!離して!!!」

力いっぱい私の左腕を掴む父の手を私は、右手で叩いた。

しかし、父にはかなわず、家の中に連れ戻された。

そのまま廊下を引きずられ、1階の納戸に放り投げられた。

「開けて!開けて!!」

納戸に閉じ込められた私は、叫びながら戸を手のひらで叩く。

父は、自分の思い通りにならないと私をよくこの納戸に入れた。

薄暗さとホコリやカビの独特の臭いにだんだん頭がクラクラしてくる。

ハンドバックから携帯電話を取り出す。

圏外だった。

私は、戸に何度も体当たりする。

「お父さん!邪魔しないで!私の人生よ!私がどう生きようといいじゃない!好きにさせてよ!」

「駄目だ!」

「なんで?お姉ちゃんがいるじゃない!」

「ゆりでは駄目だ!」

「なんでよ!」

「いいから頭を冷やすまでそこにいろ!」

父が納戸から離れていくのを感じた。

「自由にさせてよ・・・。幸せになりたいだけなの。・・・こうちゃん、ごめんね。」

膝を抱えて私は、大声で泣きはじめた。
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