桜の木に「こんにちは」

桜の木!?

「桜山君?」

そこには不適に笑っている、桜山君の姿があった。

「雨音さん、俺を知ってるの?」

ふえ?

「いや………」
「知ってるような口振りだったからさ」

そう言って、腕組みをして、私を見つめる。

「えっと………
絵本で…見たことあって…こ…この木が、似てたから………」

なんだろう………
桜山君………
近寄りがたい感じ………


「もしかして、秘密の桜の木?」

え?
知ってるの?
私は、首を何度も縦にふる。

「なんだ、やっぱり俺のこと知ってんじゃん」

桜山君は、木の枝に座る。
飛んだ?
って言うより、桜の木に吸い寄せられていったって感じ………

「えぇーーー!!
じゃ、じゃぁ、桜山君って、さ、さ、さく!!
っん!?」

いきなり、桜山君は下りてきて、人差し指を私の口にあて

「それは、みんなには内緒だから」

あ………
近寄りがたかった感じとは逆………
今度は、優しい感じ………

「じゃぁ、最後は………」

桜山君は、寂しそうに下を向く。

「うん。
でも、俺は消えるだけで、また来年………
春がくれば、また別の俺だけど俺じゃない奴が来る」

え?
どういう意味?

「桜山君じゃない人?」

桜山君は、小さく頷いた。

「生まれ変わるんだ………」

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