双子とあたし。
「…じゃあ、けいの試合見に行こっ!」
薫ちゃんが俺の手を引いて奥へ行こうとした。
けれど、俺の足は動かなかった。
「英介…くん?」
薫ちゃんは心配そうに首をかしげた。
「あんな顔も、するんだね。」
「…え」
「あんな笑顔も、俺以外にするんだね。」
「あ…。」
薫ちゃんはまずいものでも食べたかのような顔をした。
「俺は、その笑顔を俺に…、俺だけにしてほしいんだっ!」
――――…今の俺、相当わがままだな。
これじゃ、薫ちゃんを束縛するようなものだ。
あいつと同じ…――――
「…ごめんね。」
…あ、俺は馬鹿だ。
薫ちゃんにこんな顔をしてほしくないのに、
薫ちゃんにこんな言葉を言ってほしいわけじゃないのに、
―――…薫ちゃんには、笑っていてほしいのに…。
「…ごめんね。でもね、ちょっと嬉しいな。」
それまで距離のあった俺たちの腕をそっと縮めてきた。
そして、薫ちゃんのもう一方の手を俺の手に添える…