双子とあたし。
あたしと真正面に向き合えるくらいの位置になったとき、彼の瞳は開いた。
「薫…。」
「は、はい!」
あたしを呼ぶ、彼の声に思わず答えてしまう。
名前…だけで呼んでくれた。
「薫、愛してるよ。」
「…」
面と向かって放たれた言葉にあたしは何も言えなかった。
――――…アイシテル?
それって、高校生が使っていい言葉なの?
でも、少なくとも英介くんの目は嘘の欠片も見当たらない。
「俺は、薫を大切にしたかった。…でも、いつか離れていってしまうのではないかと不安になって、何か形にしたくて…」
きっとこれは、キスの理由だと思った。
英介くんは立って、東屋の入口まで歩いていく。
「…だけどもし、薫に俺以上に大切な人ができたのなら…――――」
そっと首たげを振り返る。
目と目が合うけれど、あたしは英介くんが伝えようとしていることがわからない。
唯一、わかるのが
彼の悲しみと諦めに満ちた瞳。
彼の心が瞳に映っている…
「英介くん…」
と言いきる前に、彼は雨の中を走っていった。