双子とあたし。




「…悠太ならいないよ?」



玄関で迎えたのは悠斗だった。



「なんで…?」



悠斗はスエット姿だった。服のだらしなさから寝起きだということがわかる。



「バンドの打ち上げだって。何?急用なの?」


「ううん、そんなわけじゃないんだよね」



あたしは悠斗の先を見た。


玄関は綺麗で、ホコリひとつすら見当たらない。確か、双子のお母さんは綺麗好きな主婦だった気がする。




「今日、休日だよね?彼氏さんとは会わないの?」



――――…ギクッ。


一瞬、心臓が止まった……ような気がした。



「……」



何も言わない(正確には言えない)あたしを横目で見ながら悠斗は、上がれば?、と勧めた。



「あ、うん」



そしてなんとなくいつもの癖で返事を返してしまった。



「昨日あたりから親、地区内の旅行に出かけているんだよね」



あたしを入れてゆっくりと扉を閉めた。




「それ、あたしん家もだよ」



「それもそうだよな」



悠斗が笑った。



久しぶりに見る悠斗の笑顔でこの前話していた話題を思い出す。






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