双子とあたし。




あたしは“幸島(ゆきしま)”と書かれている表札の玄関を出て、右隣りの“藤間(とうま)”の表札がかかった家へ入った。









「おばちゃんっ!」






声を張り上げて人がいることを確認する。



―――すると、布巾で手を拭きながら、藤間和子が出てきた。







「あら、薫ちゃん!
久しぶりね。どうしたの?そんなあわてて…」







――――ほんとだ…





あたしは恥ずかしながら、自分があわてていることに気付いた。






たった数メートルなのに、こんなにも息切れていた。






「―――ゆうたとゆうとはっ!?」






「悠太と悠斗?」





おばちゃんは首を傾げた。




なんでも、今日は三人で出かけることを二人は言っていたらしい…。







「…そんなこと…、今知ったよ…。」






その言葉を聞いて、「あらら」と手を口に当てる…





――…ん?






――――なんだか、その手の奥にある口は笑っているように見えた。






…―――気の…せい?








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